「私、キース様のことが好きです」

「ソフィア!」

 真っすぐキースを見つめて言えば、キースは飛び跳ねんばかりに私の両手を包み込む。

「キース様と共に過ごす時間も、キース様と共にする仕事もとても楽しい時間でした。今まで生きてきたどの時間よりも、私には輝かしく思えたのです。それにキース様は王族でありながら、自ら即座に行動し実行する。その姿がとても素敵だと思います」

「ソフィア……。一つ聞いてほしいことがある」

「はい」

「俺はずっと自分の姿を偽ることで、王としての兄の地位を守ろうとしてきた。王は兄にこそふさわしいと思っていたから。しかし兄が王位を返還したいと言い出した時、本当は王位を兄に押し付けて、俺は体よく逃げていただけじゃないかと思ったんだ」

「そんなこと」

「そんなことあるさ。その方が楽だったんだ。でも君を見つけて、共に居たい者、本当に守りたいものを自覚した時、逃げるのを辞めようと思えたんだ」

 いつも周りに女の子たちを侍らせ、特定の婚約者などを作らず遊び惚けているように見せることで、国王の地位を守ろうとしていたのか。それほどまでに慕わせる兄。そんな兄弟仲もあるのだと、少し羨ましくなる。