引きつらないように、上手に笑う。

 これはキースが私のために選んでくれたもの。

 そう言い聞かせているのに、ズキンズキンとどこかが痛む。

 手を伸ばして受け取らなければと思えば思うほど、体が固まったように動かない。

 痛みで世界が占められたように、音も消えていった。

 それでも箱に触れようとした私の手を、立ち上がったグレンが掴む。

 その瞬間、私の中の世界が音を取り戻した。


「顔が真っ青だ」


 もしグレンが止めてくれなかったら、私はどうしていたのだろう。

 どんな顔で、どんな思いでこの箱に触れようとしていたの。
 

「……気持ち悪い」


 精一杯の言葉を絞り出す。言い終えると、強烈な吐き気と共に、世界がぐにゃりと歪んだ。


「ソフィア」

「誰か、すぐに宮廷医を」


 遠のく意識の中で、二人の叫ぶ声だけを聞いていた。