父にはミアが私のことを侍女を使って監視し、追いかけ回していたとは伝えたが、具体的にキースの名前は出さなかった。

 それでも父が殿下と具体的に名前を出すということは、きっと父の耳には全て入ってきているのだろう。


「ここは、おまえの家でもあるのだから、しばらくゆっくりしなさい」


 父はやや複雑そうな顔をしながら笑うと、私の頭をなでた。

 その手は温かく、モヤモヤとした感情も少しだけ消えていく。


「あとこれを預かって来たのだが、これはもう少し体調がよくなってからでいいと思うからしまっておきなさい」


 差し出された手紙に押された封蝋はキースのものだ。

 風邪だと伝えたために、心配して届けさせたのだろう。


「熱も下がったのにいつまでも寝ているわけにもいかないので、一度王城へ行き、キース様への挨拶とグレン様へ数日ミアが領地へ戻ったことだけ伝えてきます」

「しかし」

「ちょうど報告しなければいけないこともありますので、少しだけ行って、すぐ戻って来ますわ」

「それなら暖かくして、少しの時間にしなさい」

「はい、そうします」