「ミア、あなたもしかしてマリッジブルーなの? あなたはこの国の次期宰相となる人の妻になるのよ。すてきな方に見染められたのはあなたでしょう。社交界でもあなたはいつも花で、注目の的だった。みんなが口々にあなたのことを花の妖精のようだと言っていたわ。私だってそう思っている。このふわふわした奇麗な髪も瞳も、あなたよりかわいらしい子なんて社交界にはいないでしょ」

「……」

「私はあなたと違って人付き合いが苦手だし、顔もキツイし、社交界では不名誉な二つ名を付けられたわ。あなたのように、かわいく振る舞うことが出来ればいいんだけど」


 言葉を言い終える前に、ミアがテーブルをドンとたたき立ち上がる。

 あまりに大きな音にミアの顔を見ると、ミアはまるで苦虫をかみ潰したような顔をしていた。

 自分ではミアのことを褒めていたつもりだったのに、どこかで言葉を間違えたのだろう。

 いくら考えても答えは出てこない。


「もう結構です。よく分かりましたわ、姉さま」

「ミア、待ちなさい」


 何が分かったというのだろう。

 しかし、ミアの目から伝わってくるのは今まで以上の敵意でしかない。

 ミアはこの部屋に来た時のように、大きな音を立てながらドアを閉めて出て行った。