「やっぱり……。姉さまが権力に興味があるなんて、わたし知らなかったわ」


 権力。それはキースのことを指しているのだと分かる。

 キースのことなど、何にも知らないくせに……。

 キースが王族だからという理由でそのひと括りにされたことに、無性に腹が立つ。


「殿下は、この国の雇用や貧困について考えられているのよ。それを権力だなんて。それに、私は仕事を探すために殿下を紹介していただいたと、この前もちゃんと言ったはずよ?」

「でも結局お姉さまは、玉の輿狙いなんでしょ」

「ミア、あなた」

「わたしより高い地位の方に見初められて、お姉さまはさぞ満足なことでしょうね」


 怒りが、すっと降りてくる。

 そういうことか。

 自分の婚約者よりも高い地位の人間と私がくっつくのが、嫌なんだ。

 私のことをいつまでも見下していたいから。


「ミア」


 グレンのことを想っていないのなら、婚約など辞めてしまえばいいじゃない。

 そう言いかけて、なんとか押しとどまる。

 昼間にキースに言われたことを思い出したから。

 もし仮にミアが私に憧れて嫉妬から言っているのだとしたら。

 『褒めろ』って、キースにも言われたっけ。