「お姉さま」


 軽いノックの後、ミアがいつも通り勝手に私の部屋へ入って来た。


「ミア、部屋に入る時はまず、相手の許可を得てからにしなさいといつも言っているでしょう。侯爵夫人ともなる人が、そんなではきっと困るわ」


 小言を言われたミアは大して気にする様子もなく、部屋のソファへと腰かけた。

 ベッドの縁に座ってた私も、仕方なくソファへ移動する。


「こんな遅い時間に一体どうしたの? 今、メイドにお茶でも持ってこさせるから、待っていて」


 はっきり言って、2人きりになるのは避けたい。

 いつボロが出てしまうとも限らないから。


「お茶なんていらないわ、さっき部屋で飲んだから平気よ。それよりお姉さま、今日はどこへ行ってらしたの?」

「今日……。今日はキース殿下の市内視察に同行させていただき、冒険者ギルドへお邪魔させてもらったわ。でも、それがどうかしたの」


 今日、ミアはグレンと街で衣装合わせだったと言っていたっけ。

 おそらくどこかで、私とキースが一緒にいる姿を見られたのだろう。