今ここで一人で待つよりは、居心地が悪いということはないだろう。

 受付嬢に案内され、私たちは一番奥の部屋へ入る。

「これはこれは、殿下、今日はどういう御用でしょうか。こんな綺麗な方までお連れになって」

 中にいたのは、50代くらいのがっちりした、短い黒髪にグレーの瞳の男性だった。

 デスク越しのため上半身しか見えないが、おそらくキースよりも背が高いだろう。

 腕の太さは私の太もも以上あり、筋肉が隆々としている。

 いかにも冒険者だ、と思ってしまうのは、私が転生者だからだろうか。

「いや、少し確認したいことがあってな」

「殿下、うちはなーんにもやましいことも隠し事もないですよ」

 ギルド長のその言い方には、ややトゲがある。

 冒険の依頼料から数%とはいえ、お金を払うことになったのだ。

 もしかしたらキースが敵と見なされてしまったのかもしれない。

 私が提案したことなのに、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「いや、もちろんギルド長には絶大な信頼を置いているさ。確認したいのは、そんなことではなくて、魔物が食べられるかということなんだ」