「こっちは完成!トラブルも解決済みだな。」
「了解。データ送ってある。」
「了解。15分で差し込み完成する。確認よろしく。」
「了解。」
「こっち終わったら浅井企画のトップ画にうつる。」
「私まだ完成してない。」
「設計からする。完成したらデータ送るからそこに差し込んで。」
「了解。」

大きなデスクの上は資料の山だ。淡々と会話をしながらも手をとめない二人。

そのデスクに二人並んで仕事をしているのは、ウェブデザイン担当の美園恵理と、ウェブ設計を担当している一橋宏貴。社員が300人を超えているこの業界最大手の会社で受け持ち件数も依頼数もこの5年、ダントツトップをたたき出している。

大学を卒業してこの会社に勤めて2年目にペアを組んで仕事をするようになり、そこから約1年で会社のトップに踊り出た二人には、社員たちも一目置いている。

この一週間、ろくに睡眠をとれていない。食事もただ、エネルギーが切れないように体に詰め込んでいるような状態。夕べは家にも帰れていない二人。

こんな殺伐とした雰囲気の中で仕事をするのは慣れたものだ。

二人は寝る間も惜しんでこの仕事に打ち込んできた。その成果が成績トップと、たくさんの顧客からの指名と信頼度の高さにつながっていた。


成績トップの二人には10階建てビルの8階にある大きなフロアの一部をパーテーションで区切り、仕事に専念できるような環境が整えられている。
大きなデスクを共有しながら二人は常に仕事をしている。その隣にはソファがあって、よくそこで交換しながら仮眠をとっていた。ソファの上には常に毛布が置かれている。