クレープを食べ終えて、坂井海が「そろそろ帰るか?」と聞いた。


私は別にこのままここで少し遊んでいきたい気分だったけど、帰ると言われて、じゃあ、一人で……というのもなんだか惨めに感じて、帰ることにした。


デパートのエスカレーターを降りるときって、なんか切ない。


階段が下に下に下がるのに比例して、気分までずんずんと下に、下に下がっていく気がする。


3階から2階のエスカレーターを降りている時、ふと横を見ると、2階から3階へ上がる、知り合いがいた。


あれは、高橋隆人だ。


「あれ、高橋じゃん」


坂井海も気づいて、声をかけると、高橋隆人も「おっ!」とした表情でこっちを見ていた。


「もう一回、上、上がってみようか」


そう坂井海に言われ、私たちはまた2階から3階へ、高橋隆人の元へ行こうとした。


すると、今度は同じタイミングで、高橋隆人が3階から2階へ降りていて、私たちは交差するみたいな形になった。


うわっ、すれ違い。


こういうの、電話とかでよくある。かけて、繋がらなくて、もう一度かけ直すか、向こうからかかってくるのを待つかで悩んだ末、もう一度かけてみようとかけてみたら、向こうも同じように自分にかけてきていた結果、お互い話し中になって。


で、今度は向こうからかかってくるのを待っていたら、向こうも同じことを考えていたりなんかして。


まさにこのタイミングが難しい。


「どうする? もう一度降りてみようか」


と坂井海が提案した。しかし、私は「いや」と手で制した。


「あいつのことだから、多分同じこと考えていると思う」


伊達にあいつの元カノをやっていない。わかるのだ。高橋隆人はそういう奴だ。