女子高生は走らない。


体育の授業や運動会は基本的に手を抜く。


こういう時に全力で頑張るのは、メイちゃんこと、明千代子くらいなもんだ。


かく言う私だってそう。走らない。


だけど、今は走るんだ。全力で。


「位置について」という金井奏太の合図で、私は握りこぶしをぎゅっと握る。


「よーい、どん!」


そのかけ声で、私は地面を力強く蹴る。大地を感じて、身体が風を強く受ける。


前髪が上がる。顔も、顎も上がって、風と一体になる。


そして、そのまま地面に引かれたラインを走り抜ける。


徐々にスピードを落として、止まって、両膝に手をつき、肩で息をする。


「ちくちょー! くるちい!」


全力で走るって、頑張るって、久しぶりだし、気持ちいい。