帝区は人の入れ替わりの激しい街だ。


特に西側の治安の悪さは有名で、常に殺伐とした空気が流れ、暴力が幅をきかせている。


間違っても“ごく普通の”人間が、好んで住む場所ではないだろう。


昨日まで、となりで笑っていたはずのクラスメイトが、なんの前触れもなく“家庭の事情”で転校したと、朝、担任から告げられる──


なんて、よくあるハナシ。


思い出が、次から次へと塗り替えられる。

数年前に仲のよかった友人の名前は
今日も思い出せない──。


黒帝高校は

そんなセカイの一角に建っていた。