四千年ほど前、人々と妖と呼ばれる存在は、互いに憎み合い、争い合っていた。しかし互いに争いに疲れ果て、共存することを約束したのだ。

人間と妖は手を取り合い、互いに協力し、殺し合うのをやめた。訪れた平和に多くの者が喜んだ。

だが、千年ほど前にその約束は破られた。妖は遥か昔より凶暴になり、人々を襲った。そしてまた怨嗟や怒りの連鎖が生まれ、また争いが始まるーーー。



鳥のさえずり、優しい日の光、心地よい風、その風によって揺れる美しい花々ーーー。平和な世界で生きている人間が楽しめる朝のひと時である。

「あっ、ブーゲンビリアの花が咲いているわ!綺麗〜」

黒い三つ編みを揺らし、青い瞳を輝かせ、Tシャツの上にサロペットを着た少女ーーーイヅナ・クリアウォーターは庭に花を咲かせたブーゲンビリアを見つめる。そんなイヅナに朝食の準備をしていた母親が言った。

「イヅナ、あんた今日キャンプに行くんでしょ?早く食べなさい!集合時間に遅れるわよ」

「は〜い」