宿命
前世から定まっており、人間の力では避けることも変えることもできない運命
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「あーあ。私が魔性の女だったらなぁ……」
大きいため息と共につぶやいた言葉がなんとも間抜けなものだということは、もちろん分かっている。友達の亜美ちゃんが苦笑いをしたのがいい証拠だ。
「そうだったら洗井くんに好きになってもらえたのになぁ……って?」
にやりと含みを持たせて笑う亜美ちゃんから出てきた名前に、どきりとする。そう、その通りなのだ。
「うぅぅ。だってあれ見てよ。また来てるもん、清田さん……」
あれ、とは私の好きな人、洗井竜生くんに話しかけているキラキラ女子の清田さん、という恒例の光景のことだ。
清田さんは端的にいうとかわいい。所謂目立つグループに所属している女子で、同級生だけではなく上級生からも可愛いと言われているような子だった。
「まぁ不安になる気持ちはわかるよ。だけど、あの洗井くんの対応見てたら、心配することない気もするけどね」
亜美ちゃんは2人を見てそう言った。
「えー?そうかな?私にはなんかいい感じに見えるんだけど」
「洗井くんって誰に対してもあんな感じじゃない?気さくだけど、壁を感じるっていうか……愛想笑い、みたいな?」
亜美ちゃんはそう言うけれど、私には洗井くんが好意を持って談笑しているとしか思えなかった。だって気にもなってない子にあんな風に笑いかけるかなぁ?好きでもない子にあの笑顔なら、好きな子にはどんな風に笑いかけるんだろう……。え、破壊力やばすぎない?え、こわ。
「わかんない……私には洗井くんがかっこいいことしかわからない……」
「……あ、そ」
「亜美ちゃん冷たい……。はぁ……やっぱり魔性の女に生まれたかったよぉ……」
「まぁ、美琴には美琴の魅力があるよ」
「……だよね!私がんばる!!!」
私の良いところは前向きで切り替えが早いとこだ。……それは、単細胞ともいう。