〜これまでのあらすじ〜

音楽高校で声楽を学ぶ陽菜(ひな)は、劣等生で孤立していたが、クラスメイトの翔(しょう)と仲良くなる。「陽菜は幸運の四つ葉のクローバーだよ」と、陽菜はクローバーの栞を翔から貰う。しかし、放課後デートの約束をしていた日翔は学校に来なかった。翔は交通事故で亡くなっていた。

3年後、陽菜は音大の2年生になっていた。翔のことを忘れず、毎日栞にお祈りをする。

陽菜は、お世話になっている声楽の大学院の美玲(みれい)先輩の伴奏をしていたピアノ科の先輩、鐘(しょう)と出会う。鐘は以前好きだった翔にそっくりだ。

冬真先輩とも仲が良く、彼は声楽の男の先輩だった。

陽菜、美玲、鐘、冬真と楽しい学生生活を送る。

冬真は美玲に片思いをしていた。
一方美玲は鐘のことが好きなようで、あからさまにグイグイいく。

陽菜はコンクールを受けることになり、先生の勧めで鐘に伴奏をしてもらうことになる。

鐘の陽菜への思わせぶりな態度に、コンクール地区大会の演奏中に、陽菜は鐘への気持ちに気付いてしまう。

演奏を聞いていた美玲は陽菜に嫉妬してしまう。美玲はこの夏鐘に告白し振られていた。鐘は他に好きな人がいると言っていた。
楽しそうに演奏をする2人を見て、美玲は鐘が好きなのは陽菜ではないかと思い、泣いてしまう。追いかけてきた冬真は、取り乱した美玲に声をかける。陽菜に優越感で接していた自分は最悪な女だと言う美玲。冬真はそれを否定し、美玲の肩をためらいながら抱きとめる。美玲はそれを拒まなかった。

陽菜は東京での全国大会の切符を手にする。



陽菜と鐘は新幹線で東京へ向かった。

道中些細なアクシデントが立て続けに起こる。大事な栞をなくしてしまった。陽菜はしかし焦ることもなく、悲しむこともなかった。翔のことが過去になったことに気がつく。

全国大会のために陽菜が選んだ曲は、亡くなった人を想う歌だった。だから陽菜は悲しく歌おうと思っていた。

「本当に悲しいだけの曲?」鐘は陽菜に尋ねる。陽菜は直前で、鐘に了承を得て歌い方を変えることにした。大事な人の死から月日が経った、穏やかな感情を歌うことにした。

コンクール後、2人は食事をとっていた。アクシデントばかりの1日だったと、笑い合う。陽菜は栞をなくしてしまったと鐘に話す。そして陽菜の過去の話になるが……鐘は話さなくてもいいと言い、陽菜も最後までは話せなかった。

鐘も自分の過去の話をした。5年前交通事故に遭い、それから性格や好みなど全て変わったこと、ピアノの音色が変わり、評価されるようになったこと……音楽を求めるようになったと同時に、誰かを探していた……と言いかけて、鐘は恥ずかしくなったのかおちゃらけて誤魔化した。どちらが告白したのかは定かではない。陽菜と鐘は付き合うことになった。

奨励賞をとった陽菜に美玲はお祝いを述べる。美玲はこれまで見せたことのない、隙だらけの笑顔をみせる。美玲にもコンプレックスがあった。高校のころ、歌うモンスターだと言われていたこと、自分はモンスターになってしまうのかということ、自分の幸せについて。美玲はそんな中鐘に幸せを見出した。そのことを陽菜に打ちあけた。美玲は歌っていく覚悟ができた、陽菜も振り返らずに、幸せになるための覚悟をしてほしいと話す。陽菜はわかりました、と返答する。