「今日もカッコイイー!」
「雑誌見たよー! 一位おめでとー!」
「こっち向いてー! ピースしてー!」

 昼休み、窓辺にいる女子達からキャーキャーと歓声があがった。皆の視線は窓の外に向けられている。

 ――はぁ。今日も、あいつが来たのね。

 月影律(つきかげりつ)はもう何度もこの事態に遭遇しているので皆が誰に騒いでいるのか、見なくても分かった。

 開けられた窓から突風が入ってきた。風に煽られた律の髪は、激しく乱れる。

 教室にいた女子達が続々と窓辺に集まり、昇降口前を見下ろし一生懸命に対象の人物の気を引いた。
 まともに挨拶する子はいない。

 その様子はまるで、ライブ会場のよう。騒がしすぎて鼓膜が破れそう。

 窓際の席に座る律は、移動しなくてもその姿を視界に入れることは容易い。頬杖をつきながら、この騒ぎの元凶を睨みつけた。

 新緑の季節。

 輝きが増してきた太陽の光を浴びながら登校している、学年が一つ下の後輩。
 この世の誰もが初めてその姿を見た時、イケメンすぎて衝撃が走るという。

 くっきりとした大きな目に高い鼻、綺麗な輪郭。
 背が高くスタイルも良い。

 これ以上のイケメンは存在しないのではないかといわれている程の格好良さなのだが……律は全然好みではない。