わたしは必死で女将に語りかけた。なんとしても買収を阻止したくて……。
「ありがとう、透子。……でももう、限界みたいやね」
「え……?」
女将の限界とは、何なのだろうか……。
「夕月園を運営する資金はもうないわ……。資金を援助してくれていた銀行にも、この前融資を断られてしもうて……」
「……え?」
融資を断られた……!?そんな……。
なんで、なんで……!
「夕月園には、もう融資は出来ないってね。言われてしまったの」
「そんな……。じゃあ夕月園は……?」
やっぱりもう、おしまいってことなの……?このまま、買収されるしかないってこと……?
そんなの、絶対にイヤ……! 無くすなんて、イヤだよ……。
「……もう、無理みたいやね」
「そんな……!」
不審に思ったわたしは、夕月園に融資を断った銀行を調べた。
するとその銀行は、高城ホールディングスの取引先の銀行だということが判明した。
きっと高城明人が圧をかけたんだ……。夕月園には融資をするなって、もうそうとしか考えられない。
おかしいと思った。ずっと支援してくれてたのに。 そうか、だから女将が融資を頼んでも断ったんだ。
高城明人が裏で手を引いている。 わたしたちをここから追い出すために。



