「ねえ、アルトは本当に良かったの? 今日が王立魔法学院の入学式だって、レグルス殿下のお手紙に書いてあったけど……」

 王都にあるディートグリム公爵邸の自室にて。『空間魔法理論』の教科書とノートを机に広げていた私は、そばに立っていたアルトバロンを見上げた。

 アルトバロンが魔力中毒で倒れて、私が正真正銘の『毒林檎令嬢』として固有魔法を発現させた誕生日から、あっという間に二年が過ぎ――私は十五歳になっていた。

 とうとう来年には、【白雪姫とシュトラールの警鐘】の舞台である王立魔法学院に入学することになる。

 私より一歳年上で十六歳になったアルトバロンは、本来ならば今年が入学時期。
 しかも学院からは『首席として入学式でぜひ新入生代表のスピーチを』というお話も来ていたのに、彼はそれを蹴って今年度から入学しない道を選んだ。