私の七歳のお誕生日。最愛の妻の忘れ形見となった娘を溺愛するお父様が、『誕生日プレゼント』と称して私に与えたのは、なんと狼のようなもふもふの耳を持つ黒髪美少年だった。
「ティアベルよ。彼は今日からお前の忠実な従僕として、お前を守る剣となり盾となる」
「……えっ?」
ちょっと待って、意味がわからない。意味がわからないからもう一度言う。
私の七歳の誕生日祝いにプレゼントとして与えられたのは、黒い毛並みの狼耳をピンと立てて微動だにさせず、警戒心に満ちた菫青石色の凍てつく瞳でこちらを睨みつけている『絶世の黒髪美少年』だった。
……うん? やっぱり理解できないな?
よくわからない事態に内心大混乱だ。
まるで冥府の死神と見紛うばかりのおそろしき美貌と囁かれ、社交界で畏怖されているお父様は、悪役顔で微笑んでいる。