ある日突然、わたしは期間限定で夫と結婚することになった。しかも2年間という、期間限定で。
 それはもはや、離婚を前提とした結婚だった。



 



「爽太さん、おはよう」

「紅音、おはよう」

 爽太さんと結婚したのは、半年前のこと。そのきっかけになったのは、父親の借金だった。
 父親が多額の借金を作ってしまい、返せなくなった父親は、首を吊って自殺した。その事実を知ったのは、父親が亡くなったすぐ後だった。

 まさかわたしの名前を借りて借金していたとは知らなかったわたしは、闇金から借金を取り立てを受け、地獄を見た。
 毎日借金取りが家にやってきて、金を返せと言われた。時には金を払えないなら自分の体で払えと言われて、その日も無理矢理闇金に連れて行かれそうになった。

 そんな時わたしを助けてくれたのが、爽太さんだった。

「やめてっ、離してっ……!」

「暴れるんじゃねーよ!」

「おい。女一人によってたかって何してんだ。イヤがってるだろ?」

 それが、わたしが爽太さんとの出会いだった。そしてその日は、わたしの25歳の誕生日だった。