「あっ、柊奈どこに行ってたの……って、なんか顔赤くない?大丈夫?具合悪い?」



慌てて翠くんの部屋を出てすぐ、階段前で紬ちゃんと鉢合わせした。



「ううん、大丈夫!ちょっと部屋の中暑かったのかも……」



なんて、咄嗟に口から出た嘘。


翠くんと事故だとはいえ、キスをしてしまったなんて、紬ちゃんには口が滑っても言えない。


だって、紬ちゃんは翠くんのことが好きだから。


このシェアハウスに来て紬ちゃんに出会った日に、確かそう言っていた。


わたしは翠くんが好きだけど、それはファンだからで。


紬ちゃんの翠くんへの気持ちとは違う。


紬ちゃんを傷つけないためにも、さっきのことは自分の心の奥にしまい込むしかない。



「そう?ならいいんだけど……」


「もう紬ちゃんは心配症だなぁ。あれだよね、明日の課題!」


「うん!部屋じゃ狭いからリビングでやらない?」


「いいよー」



これ以上突っ込まれないように、話を変えた。


あまり気にしてなさそうでよかった。