柊奈(ひな)、準備はできた?」


「ちょっと!あとちょっとだけ待って!?」


「早くしないと船行っちゃうわよーっ」


「わかってるってー!」



玄関先でわたしを呼ぶお母さん。


わたし、芦苅(あしかり) 柊奈(ひな)、この春から高校生になる。


生まれてからずっと、わたしはコンビニもなく海と山に囲まれた小さな島で育ってきた。


遊びと言えば、ゲームセンターやテーマパーク……ではなく、虫取りや川遊び。


おかげで男勝りの丈夫な体に育ったと思う。


もちろん、島には高校なんてものはない。


小中は同じ校舎。


だから、高校に進学するのと同時に、この島の子どもたちは憧れの本土へと渡っていく。


都会に憧れを持っているのは、わたしも一緒。



「柊奈ー!」



これで名前を呼ばれるのは、もう3回目。


そろそろ行かないと、本当に遅刻しちゃう。


名残惜しさを感じながらも、大きなキャリーケースを持って自分の部屋を出た。