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地獄だ。





「お、香月~」


自転車置き場で肩をぽんと叩かれ、
心底安心する。


「大連…」

「なんだよ、汗だくじゃねぇか。」

「いや、それが…」


チラッとヤツの方を見ると、さっきまでいたのに
いつの間にか姿を消していた。


「っっ!!大連!マジヤベェ。助けてくれ!」


俺は数日間のストレスを
とうとう大連に吐き出した。



**

始まりは今週の月曜日…


部活の帰り、あの女に呼び出された。

最初は告白だと思った。

雰囲気がまさにそれ。

緊張感があって、人気のないところへ
連れ出されて、そいつの顔は真っ赤。


正直名前もぎり覚えてるくらいのヤツだったけど、
告白されるということ自体は嬉しかった。


だから、喜んでついてったのに…


『私と友達になってください!』


そんなん普通言うか?
適当に話しかけたりすればいいのに…

変なヤツだとは思ったけど、悪くない気分だった。

だからその日も一緒に帰った。
次の日も教室で話しかけた。
ちょっと嫌だったけど、また一緒に帰った。


そしたら一昨日…


『おはよー!』

朝、俺の家の近くの道でそいつは待っていた。


一瞬フリーズして、すぐ冷静に考える。

こいつの家、俺んちより学校近いよな?

え、じゃあなんで俺んちの近所で待ってんの…?


なんか色々言い訳してたけど、
俺は拒否りまくった。

女の子に言ったことないようなキツイ口調と顔で。


**


「なのにその日から、更なる恐怖が始まった。
朝と帰り、来るんだ。ヤツが。

不自然な笑顔で、登下校の時だけピッタリ張り付いてくる。

こんなん怖すぎるだろぉ!!
なんなんだよ、あの妖怪は!!」


「ちょ、落ち着けって香月。
そんなに怖がることか?
妖怪って…七瀬さんのこと?ひどくね。」


大連の拍子抜けするような笑顔と返答に
俺の怒りは込み上げる。


「おま…っ、ぶん殴るぞ!
こええんだよ!本当に!!」

「クラスの女子と毎日一緒に
登下校してることがか?」

「はい、そうです!
どんな心霊番組やチンピラより怖いです!」


俺は「何とかしてくれ!」と大連の肩を揺すった。