夕暮れの学校の屋上に、一人の女子生徒が虚ろな目をして立っていた。赤いスカーフのセーラー服は、所々破れたり汚れたりして女子生徒はまるで童話の灰被りのようにみすぼらしい姿になっている。

虚ろな目をした女子生徒の目に、ゆっくりと沈んでいく夕日が見えた。その夕日を見た刹那、女子生徒はゆっくりと何かを呟く。

その数秒後、その体は宙を舞い地面に叩き付けられる。黒いアスファルトの道に真っ赤な花が咲いた。



この世界には、にわかには信じられない出来事が目の前で起きていたりする。人が行き交う道を歩く赤いボタンとリボンのついた黒いワンピースを着た少女も、信じられない出来事の一つだ。

少女の名前は日暮柘榴(ひぐれざくろ)。彼女は普通の人間の姿をしているが、実際は普通ではない。

柘榴が人通りの多い道から細い路地へと入っていくと、路地の真ん中で二人の男性が喧嘩している最中だった。どうやら一人の男性が、もう一人の男性の恋人と浮気をしたらしい。