<魔女の国・グランビア家の館・
クラリスの部屋・16時>

クラリスは
自分の部屋のベッドに置かれた
6番目の卵を、眺めていた。

そして母の言った言葉を
思い出していた。

「クラリス、
あなたの<使い魔>にするためには、
新月から満月まで、この卵を
温めなくてはなりません。

あなたと<使い魔>の(きずな)をつくるためには
必要な事なのですよ」

この卵は大きい。
しかし、
クラリスが、一人で持てるくらいの
軽さではある。

クラリスは母の言葉を復唱した。

「その1・一緒に寝ること」
「その2・いつも持ち歩き、
自分の体温が、卵に伝わるようにすること」

ベッドで一緒に寝るのは・・
何とかなるだろう。
ベッドを壁際につければ、
落とすことはない。

でも・・持ち歩くのは・・
ちょっと。

無理だっ!

抱えて歩くのは無理だ・・・・
ポケットに入る大きさなら
よかったのに。

早く草原に出たい。
薬草リキュールに入れる
薬草を探したい。

新芽が出るこの時期でないと、
毒が出てくる薬草もある。

もし、
抱えて歩けば、落として割れるかもしれないし・・・
割れたら大変なことになる。

クラリスは悩んだ。

そして、ベッドにある毛布を
卵にすっぽりかぶせた。
「これでよし!」

クラリスは
薬草を入れるかごを持つと、
部屋から急いで出て行った。