<魔女の国・グランビア家の館・15時>


大広間の中央に座っているのは、
グランビア家当主である、
エリーゼ・グランビアである。

深い森の緑のドレスと
金の髪は薄く透けるベールで
被われている。

そして、
強い力を放つアメジストの瞳。

娘のクラリスは
左側の椅子に座っている。

母親に似ているが、まだ幼い。
成人に達するまであと1年ある。

やはり
母と同じ緑のドレスだが、
その色は若葉の色、
そして髪は茶色がかった金、
瞳はルビーの赤。

クラリスはもじもじしている。

このように長く、かしこまって
座っているのは苦手なのだ。

早く野原に行きたい。

右側には老婆が3人、
みな、ぞれぞれに長い杖を
持っている。

老婆の姿ではあるが、本当は違う。

このような正式な集会では
招待客はみな、老婆の姿になる。
魔女の国のしきたりなのだ。

この3人の老婆は
魔女の国のそれぞれの家系の
代表者である。

「それでは交流会の件について、
提案いたします」
エリーゼ・グランビアが
声をあげた。

クラリスは母親の方を見た。

母はとても美しく、威厳がある。
しかし、冷たい感じがする。

クラリスと二人きりの時は、
とても優しい母なのに。

「今年は
グランビア家の順番ですので、
クラリスを派遣します。
よろしいですね」

ドン、ドン、ドン。

3人の魔女は同意の意味をこめて、床に杖を打ち付けた。

「派遣にあたっては
<使い魔>をつけなければなりません。
それではこれから、
その選定を行います」

エリーゼは指を鳴らした。

1回目、
床に鶏の卵ほどの大きさの卵が
出現した。

2回目 
床にダチョウの卵ほどの大きさの
卵が出現した。

3回目、4回目と
卵の大きさは、どんどん大きくなっていく。

6回目には
高さ1メートルほどの巨大な卵が
出現した。

合計6個の卵が、床に並んだ。

エリーゼはまた、指を鳴らした。

卵の表面に、数字が浮かんでくる。
1番から6番まで。

エリーゼはクラリスの方をむいて、再度指を鳴らした。

クラリスの目の前の床に、
30センチほどの箱が出現した。

「クラリス、その箱から1枚紙を引き抜きなさい」

母に言われ、
クラリスは箱に手をつっこみ
紙を引き抜いた。

「番号は?」
母が聞く。

「6番」
クラリスは答えた。

その瞬間に
6番の卵だけが残り、後の卵は消えた。
クラリスの目は、6番の卵を凝視している。

<なんて・・おおきいんだろう>

エリーゼが宣言した。

「娘、クラリスには、
この卵の使い魔がつけられます。
承認を」

ドン、ドン、ドン。

3人の魔女は、
同意の意味をこめて、床に杖を打ち付けた。

「それでは集会を終了します」

エリーゼの声が終わるやいなや、
魔女たちは消えた。

大広間には
クラリス、エリーゼ、
6番の巨大な卵が残った。