<グスタフ皇国・王宮・大広間・
交流会4日目・10時>

交流会4日目。
今日は知識を問う試験だ。

科目は幾何学(きかがく)
地理・歴史・生物・科学・天文学。

アンバーは家庭教師から
しっかり、受験対策指導を受けていた。

問題用紙と解答用紙が配られ、
参加者はペンを持ち、問題用紙に向かった。

アンバーも解き始めた。
これならいける!
パーフェクトだ。

アンバーの隣に、
クラリスは座っていた。

まったくクラリスの手が
動いていない。

目が遥か彼方(かなた)
いっている。
夢をみるように、うっとりしている。

<問題を解かないのか?
解く気がないのか?
わからないのか?>

アンバーはその様子に
気にはなったが、頭を振った。

クラリスなんてどうでもいい。
今は自分の課題に、集中しなくては。

その瞬間
クラリスのペンが、猛烈に動き出した。
ものすごく集中している。

一番早くアンバーが手を上げた。
問題が終了したので、退出する合図だ。

そして、立ち上がる時に
クラリスの解答用紙が見えた。

「えっ?・・・・・」

紙には・・
グスタフ皇国皇帝の顔が、描いてある。
それもうまい。

クラリスも手を上げた。
早く退出したいのだろう。

係りの側近が、回収に来た。

その時点で
クラリスの解答用紙は、
まったくの白紙状態になっていた。

昼過ぎに結果が発表された。

アンバーが満点で1位、
クラリスは0点で最下位である。

当然の結果だが・・・

アンバーはその結果を知り、
怒りが込み上げてきた。
クラリスの態度が悪い。

解答用紙に皇帝の似顔絵を
描くなんて・・
しかも白紙に戻して提出だ!

今回の交流会は、グスタフ皇国が
主催だ。

父上の顔に、泥を塗るような態度、
あのやる気のない態度は
本当に許せない!!

使い魔のイーディスにも
問題がある。

(あるじ)の出来が悪ければ、それをしっかり指導するのが
使い魔の役目でもある。

統治する者も心構えや、
帝王学を学ばせるサポートを
するのも使い魔の仕事だ。

クラリスの側に、イーディスが
ほとんどいない!
それが大問題だっ!

アンバーは決心した。

ここはきちんと言っておかねば
なるまい。
主催国のホストである自分が、
言うべきだろう。

クラリスはどこにいるのだろうか。

他の参加者は明日の準備で忙しい。明日は音楽会だ。

それぞれが、国の紹介を兼ねて
歌や楽器、踊りなどを披露する。

たぶん、外だ!
あいつは時間があれば、外に出て行った。

アンバーは
王宮を出て、庭を通り抜け
小さな茂みのそばにある池にむかった。