これは、まだ俺が美央ちゃんと出会う前のお話……。


 ***


「哉斗ー! そろそろ帰ろーぜ」


 今日もいつも通りの日常で、親友の海斗と一緒に話をしながら教室を出る。出た瞬間、すぐに女子たちのキャーキャーと言った黄色い声が聞こえてくる。

 またか……と思って静かにため息を吐くと、俺とは違うタイプの海斗は笑顔を振り撒いている。よくできるよな、そういうことと感心していると一人の女子が出てきて高い声で「哉斗くん!」と声をかけてきた。


「……何?」

「あのっ、私。哉斗くんが好きですっ!」

「あっそう……誰?」


 女子は、髪の毛が長くて派手で俺の嫌いなタイプだった。メイクもコテコテで香水臭いし、気持ち悪くなりそうだわ……


「私、里村ももっていいますっ!」

「へぇ、そうなんだ」

「はいっ! 私、奨学生で……入学式で哉斗くん見てから本当に好きで!」


 奨学生、ね。

 よくいるんだよね、玉の輿目当てで俺みたいな御曹司狙う女子。はぁ……めんどくせーな