『美央、勝手にどこか行っちゃだめだよ』

『分かってるよ』

『哉斗くんと離れたらダメだからね』


 さっきからお父さんとお兄ちゃんに『ダメだよ』と連呼されている。もうすぐ哉斗くん迎えくるよね……というか、早く来て欲しい。


『哉斗くんの言うことちゃんと聞くんだよ』

『分かってる!』


こんなやりとりを二人としていた時、リビングのドアが開いて哉斗くんが入ってきた。


『おはようございます。五十嵐社長に央翔さん』


 お父さんとお兄ちゃんに哉斗くんが挨拶すると、私に近づいてきた。


『美央、おはよう』


 ブラウンのニットに白のスキニー、紺色のコートを着ていて哉斗くんはいつも以上にかっこいい。今日から三日間、修学旅行だから私服だ。


『おはよう、哉斗くん』


 私は立ち上がると家族に『行ってきます』と手話で言い哉斗くんへ駆け寄る。


『今日も美央は一層、可愛いね』



 私は、私服で白のニットでブラウンのマーメイドスカートを履いて髪をポニーテールに結ってもらった。今日も正常運転の彼は、私の頭をなでた。