「ケンカ、したの?」
柚巳がハンバーグを飲み込んで聞く。
「んーケンカ、どうなんだろうね……」
「ケンカしたら、どっちも『ごめんなさい』って言えばいいんだよ」
「柚巳。大きくなったら色々あるの」
どんな事情があるのか全然わからないから、勝手なことは絶対に言ってはいけないのに。
里柚も柚巳も止まらないから、困ってしまう。
今、ふたりのせいで水牧くんに嫌な思いさせちゃってる。
どうにか話題を早く変えなきゃと考えていると、水牧くんの方が口を開いた。
「……俺のお母さんは、俺のこと嫌いだからさ。ごめんなさいしても多分聞いてくれないよ。俺も許すつもりないし」
水牧くんのそのセリフにふたりはぽかんとしている。
「……ごめんね、美味しいもの食べてる時にこんな気分下げる話」
サラッと『美味しいもの』って。
そんなこと言われて、内心喜んでいる自分がいるけど、
水牧くんの話が心に引っかかったまま。
「そんな。柚巳たちが色々聞いちゃうからっ、ほんとごめん」
「まぁ、別に隠すような話じゃないしね。あ、ねぇ、これも食べていいの?」
「あ、うん。昨日の残りだけど」
カボチャの煮付けを水牧くんの方に差し出すと、彼はすぐにそれを口に入れて。
「ん。うっま」
あまりにも嬉しそうな顔でそう言うから、胸の奥がギュッとした。