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 朝から甘い時間を過ごした沙菜は両手を頬に当て悶絶していた。

 今日の蒼士さん可愛かった。

 キスのおねだりとか……。

 キャーー!!

 一人キャーキャー言っていると、テーブルの上に封筒を発見した。

 あれ?

 これって、もしかして……蒼士さんの忘れ物?

 蒼士さんが忘れ物なんて……朝バタバタしていたから忘れちゃったのね。確か午後から会議って言ってたから……。

 そうだ!!



 *


 キッチンに甘い香りが漂ってくる。

「出来た!!」

 オーブンを開けると良い焼き色に焼きあがったクッキーが並んでいた。クッキーをよく冷ました後、袋に詰めると鞄にしまいマンションを出た。蒼士の会社までは電車で一駅行って、徒歩十五分、一度見に来たことがあるため、迷わずに行くことができた。

 エントランスに入り受付で蒼士の名前を出せば中へと通される。

 エレベーターで三階……。

 ドキドキと高鳴っていく心臓。

 蒼士さん驚くかな?迷惑かな?大丈夫かな?

 いろいろなことが頭を駆け巡る。

 三階の扉の前で沙菜は深呼吸をしていると、突然扉が開いた。扉にぶつかりそうになり「キャッ」っと小さく悲鳴を上げると、相手の男性も「うわっ」と声を上げた。

 私は男性に頭を下げ、開いた扉から中を覗いてみると、奥の席に座っていた蒼士が立ち上がった。

「さっ……沙菜」

こちらに向かってくる蒼士にとびっきりの笑顔で沙菜は答えると、鞄に入れてあった封筒を手渡した。

「蒼士さんこれ、忘れ物持ってきました。その……朝はバタバタしてしまいましたから……」

 
顔を赤くする沙菜の姿にこれは朝からなにかがあったのだと、周りにいる社員達の想像を膨らませた。

「部長……この人もしかして……」

「ああ、妻の沙菜だ」

「「「えーーーーーー!!!!」」」

「部長の奥さんなんですか?超ー美人!!」

「マジかよ」