「透也のこと、ずっと忘れない」

『おれも、暖乃のことずっと好き』

そんな会話を交わしたあと、耳元で聞こえてくる透也の吐息を感じながら眠りについた。

朝目を覚ましたら、透也は消えている。今度こそ本当に「さよなら」だ。

そう思っていたのに……。


翌朝目を覚ますと透也はまだ私の横にいて、すやすやと気持ちよさそうな寝息をたてていた。

「透也、帰ったんじゃなかったの?」

『んー、暖乃の引っ越し見届けたら帰る』

唖然としながら訊ねると、あとから目覚めた透也は平然とした顔でそう言った。

前日の夜に切ない「さよなら」をしたはずなのに、引っ越し当日も今までと変わらず私のあとを付き纏い、家具の配置に文句をつけてくる透也に拍子抜けする。


「いつまでいるの?」

引っ越し作業の途中に一貴さんに気付かれないようにこっそりと話しかける度に『もう少し』と曖昧な返事ばかりしていた透也は、引っ越し業者が引き上げたあともしれっとした顔で私たちの新居に居座り続け……。

そして、新居に引っ越してきてから2日が過ぎた今も、なぜか私のそばにいる。