着替えて家を出た私は、透也と一緒に電車に乗った。

行き先は、生前の透也とよく一緒に行っていた映画館のあるショッピングモール。

事前に調べたら、ちょうど気になっていた恋愛映画が上映されているらしく。それを見に行くことにしたのだ。

映画の上映時間よりも1時間ほど早めにショッピングモールに着いた私たちは、特に当てもなくモールの中をぶらぶらとした。

と言っても透也は私にしか見えないから、私はひとりでショッピングモールを歩く買い物客だ。


『あ、あそこの店。暖乃がよく服買ってたよな』

モールの中に入っているあるブランドの店を通りかかったとき、透也が店を指差しながら懐かしそうに笑った。

「あぁ、うん。よく覚えてるね」

『だっておれ、この店の前で試着室に入る暖乃のことよく待ってたし』

「そういえば、そうかもね」

『見てく?』

「別にどっちでも……」

服を買う予定はなかったけれど、透也がすーっと店のほうに移動して行くから慌てて追いかける。

生きてたときは、私が服を見ていると退屈そうにしていたくせに。

誰にも姿が見られていないとなると、女性物のアパレルショップに入ることに何の抵抗もないらしい。

もしくは、ひさしぶりだから楽しいのかもしれない。