一貴さんの会議中に秘書室でデスクワークを行っていると、社長秘書の竹下さんが私のそばに歩み寄ってきた。
「高沢さん、少しいい?」
「はい、大丈夫です」
キーボードを打つ手を止めて顔をあげると、竹下さんが形良く整えられた眉を申し訳なさそうに下げながら私に資料を差し出してきた。
「この前高沢さんが提出してくれた役職者会議の資料のことなんだけど……。データの一部にミスがあったの。もう一度元の資料を見直して作り直してもらいたいんだけど、お願いできる?」
「ほんとですか? 気付かなくて申し訳ありません」
「私のほうこそ、気付くのが遅くてごめんなさい。定時前の忙しい時間なのに」
「いえ、謝らないでください。私のミスなので」
私の確認不足のせいなのに、竹下さんのほうが申し訳なさそうに私の顔を見てくるから恐縮してしまう。
「できれば私も手伝いたいんだけど、これから社長の外出に同行しなければいけなくて。修正ができたら私のメールに資料添付しておいてもらいたいんだけど、構わない?」
「もちろんです。急ぎで直して、新しいものを提出しておきます」
「ありがとう。よろしくお願いします」



