教会の祭壇の前で向かい合って立った一貴さんが、私のヴェールをゆっくりとあげる。
軽く伏せていた顔をあげると、シルバーの滝シートに身を包んだ一貴さんが、私を見つめて幸せそうに微笑んだ。
今日は、私と一貴さんの結婚式。透也と二度目のお別れをした翌朝に一貴さんに気持ちを伝えた私は、彼と入籍をして、無事に今日の晴れの日を迎えることができている。
「それでは、誓いのキスを」
神父の言葉を合図に、一貴さんがそっと顔を近付けてくる。
私たちの結婚式の関係者は、一貴さんの立場もあって会社の関係者が多い。
仕事関係の人たちの前で唇に近いのキスをするのはなんとなく気恥ずかしくて。
「誓いのキスはおでこで」と、一貴さんには事前にお願いしてあった。
少しずつ距離を詰めてくる一貴さんが額にキスしやすいように軽く顔をうつむけて目を閉じる。
息がかかるくらいに縮まった距離にドキドキと胸を高鳴らせていると、なぜか突然、一貴さんの指が私の顎にかかった。



