「あたしが靖くんにお金をあげる。それでいいでしょう?」


「そんなのダメに決まってるだろ? 松原さんには松原さんの人生があるんだ」


「里奈だよ」


「え?」


「里奈って、呼び捨てにして」


「……里奈」


憧れだった靖くんがとまどいながらもあたしの名前を呼んでくれる。


それだけで、もうなんでもできる気がした。


「心配しないでいてね」


あたしはそう言うと、足早に自宅へと向かったのだった。