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 魔獣係の一番の楽しみは、魔獣達を存分にもふもふできることである。
 そして、魔獣達のブラッシングはミレイナの最も好きな仕事のひとつだった。

[よし。すっごくふわふわ!]
[本当?]

 黒い尻尾が特徴的なイレーコは、自分の毛並みを見ようと身を捩る。

[本当よ。イレーコ、すっごくかっこよくなったよ]
[かっこいい?]

 ブラッシング仕立てのふわふわの黒い尾が忙しなく左右に揺れる。

(可愛い!)

 ミレイナは思わずイレーコをぎゅうっと抱きしめる。
 これぞ、もふもふに体を埋める至福のとき。

 そのとき、外にいたリンダがひょっこりと入り口から顔を覗かせた。

「ミレイナ。今日はこの後、お任せしても平気?」
「あ、うん。今日は大忙しだもんね」
「うん、そうなの。来賓の方々が今日辺りから続々と到着されるみたい。ごめんね」

リンダは両手を口元で両手を合わせると、ごめんねのポーズを取る。