──月城高等学校にはキラキラでふわふわな、まるで、お人形さんのような可愛い女の子がいる。


私が通っている学校にはそんな嘘みたいな噂がある。


その噂は近隣の学校どころか隣県の学校にまで広まっているそうで、それを聞いた時、高校生の情報網の広さに震えた。


キラキラ、ふわふわ、お人形さんという少し幼稚な言葉たちは、珍しいもの見たさな高校生にとって印象深いものとなったようだ。


それらの単語は高校生には似つかわしくないであろうもの。


ただしそれらはその子を表現するには的確な言葉である。


本人が言うのだから紛れもない真実なのだ。



──そう、その噂の可愛い女の子というのは私、結城かれんのことだ。




さすがに名前までは広まっていない。
……と信じたい。そうであってほしい。


自分は相手のことを知らないのに相手は自分の名前を知っている、というのはなかなかの恐怖だから。


今となっては校門前で他校に告白されるのに慣れてしまったけど、始めの方は衝撃的だったなぁ。


それでも笑顔を崩さなかったあの頃の自分を褒めたい。