「飼う、とか、頭おかしいンか! あの女ァ!」
「胸張ってヒモしてるお前も大概だけどな」

 十万円が入った茶封筒を持たされた代わりに没収された携帯。「元気でねぇ~」と玄関から放り出された俺は、唯一と言っても過言ではない友人、雨水(あまみ)悠真(ゆうしん)の家へと押し掛け、そして、叫んだ。

「ヒモって言い方やめろ。働かねぇ代わりに家事全般やってたっつうの」

 ぐびり、舌にのった苦い液体を喉へと流し込み、手に持っていたアルミ缶をテーブルに置いた。

「まぁ、それも愛があれば成り立つんだろうけどな」
「俺はちゃんと好きだったっつうの!!」
「ちょ、待ってほんと腹(よじ)れるッ……苦しッ」
「あああ! ちくしょう!」

 バンッバンッとテーブルを叩きながら大声で笑う眼前の男をぎろりと睨むも、効果はない。
 チンパンジーかと思えるその動きのせいで、マナーモードでも搭載されているのかと思うような振動でもってその身を揺らすアルミ缶を、そっと握って、そっと持ち上げた。