一人の青年の髪を風がいたずらに揺らす。


住んでいる町がよく見える丘の上に青年は立っていた。



「また、ここにいたのですか」



一人の執事が青年を呼びに来た。


どうやらもう、戻らなければいけない時間になってしまったらしい。


青年は、名残惜しそうに、今まで見ていた景色に背を向けた。



当たり前だと思っていたものが、当たり前ではなくなり、それでも人は歩む足を止めてはいけない。


そんな残酷な世界であるから、余計に過去の思い出は美しく、そしてしつこくまとわりつく。


それでも、彼女想い続ける青年は、彼女の思い出とともに歩んでいる。


今日も、そしてこれからも。