「お兄ちゃーん、そろそろ起きないと遅れちゃうよー?」


 菜箸でくるりと卵焼きをひっくり返しながら、まだ夢の国を散歩しているであろうお兄ちゃんに届くように大きな声でそう叫んだ。

 しばらく反応がなかったものの、五分くらいして廊下をのしのしと歩く音がしてリビングのドアが開いた。


 「……はよ、真佳」


 眠たげな声にふふっと小さく笑う。お兄ちゃんは低血圧だから朝が苦手らしい。最近知ったばかりだ。

 返事をしながらお茶碗に白米をよそい、朝ご飯をテーブルの上に並べていく。

 テーブルの上に頬杖をついてぼんやりしていたお兄ちゃんは、やっと目が覚めてきたらしく「ありがと、真佳」と優しく微笑んだ。