六年後────。
「もしもし、正樹叔父さん? うん、元気だよ。すぐに連絡返さなくってごめんね。うん、うん。ちゃんと食べてるよ。……もー、分かってるってば。ちゃんと次の休みには日本に帰るから!」
あ、こら真佳!と電話の向こうで怒る声が聞こえて、タンと通話終了のボタンを叩いた。
ふう、と息を吐き窓の外を見上げる。
日本とは違う広くて大きな空。
私は今、アメリカに居る。
あれから本当に色んなことがあった。
お兄ちゃんは凛ちゃんが言った通り、神崎から離縁して生田の苗字を名乗るようになったのだと正樹叔父さんから聞いた。
詳しくは知らないけれど、その時に叔父さんたちとは激しくもめたらしい。
私もあの家から追い出されそうになり、そんな時に正樹叔父さんが迎えに来てくれた。
『真守くんに、頼まれててね。俺がアメリカに行ったあと、真佳のことを助けてあげて欲しいって』
正樹叔父さんの家に寄せて貰うことになって、荷物を運んでいる車の中でそう教えてもらった。