制服が夏服に変わって、高校に入学して初めての試験が目の前に迫っていた。

 ふわあ、と欠伸をひとつ零して切った卵焼きをお皿に盛りつける。


 「────はよ、真佳」


 その時、とんと背中に硬い何かが触れてお腹あたりにするりと腕が回される。驚いて顔をあげると、眠そうな目をしたお兄ちゃんが私を後ろから抱きしめていた。


 「び、びっくりした……! 包丁持ってるのにあぶないよ?」

 「んー……」


 半分寝ぼけたような声でお兄ちゃんが返事をする。


 「お兄ちゃん? 起きて、おはよ」

 「今はお兄ちゃんじゃないから、起きない」


 少し拗ねたような口調でそう言ったお兄ちゃんは、私の頭の上に顎を置いて「くう」と寝息を立てるふりをした。


 か、可愛い……!

 きゅうっと胸がしまって、思わずお兄ちゃんの頬の星に手を伸ばす。