────ぴぴぴぴ、とアラームの電子的な音で目が覚める。

 腕だけ伸ばしてスマートフォンを取り、鳴り続けるアラームを止めた。そのままカレンダーのアプリを起動すると、今日の日付には体育祭と表示された。


 「……行きたくないなあ」


 目の上に腕をのせてそう呟く。その声は静かな部屋に溶けて行った。



 お兄ちゃんが家を出て行って、一週間が過ぎた。

 あの日の夜、帰宅した私たちは最後まで一言も交わさずに次の日を迎えた。そして朝、お兄ちゃんはいなくなっていた。

 テーブルの上には「神崎の家に呼ばれたので、しばらく向こうの家に泊まります」、そう書かれたメモが一枚残されていた。


 それを全部鵜呑みにするほど、私も馬鹿じゃない。