白馬に乗った王子様では無いけれど、私がピンチのときは必ず駆けつけてくれた。泥だらけになって、傷だらけになって。自分のことは二の次で必死に私へ手を伸ばしてくれた。


 「まなかはおれがまもるんだ。おれは兄ちゃんだから!」


 その言葉がただただ嬉しかった。


 「まなかはおれのたからものだよ」


 比べられないくらい大切な人だった。


 「まなかっ……ぜったい、ぜったいむかえにいくからっ!」


 泣きながら、ボロボロになりながら、必死に私へ手を伸ばしてくれたお兄ちゃんの顔は時間とともに薄れていった。


 けれど十年。その言葉をお守りに、私は生きてきた。