「チッ。なんだ、起きてたのかよ」


サリーと笑顔を交わしていると、不機嫌極まりない声が部屋を貫く。

声の方を見れば、開かれた扉にもたれる長身の赤毛の男だ。


「まぁ、カルム団長。こんな朝早くにどうなさいましたか? それも乙女の部屋に勝手に入るだなんて」

「――仕事だ」


いつの間にいたのだろう。

たしなめるサリーに対し、ぶっきらぼうに言い捨てたカルム団長は、そのままズイズイと部屋の中へとはいってくる。


「な、なによ⋯⋯いきなり入ってこないでよ」


漆黒のダブルボタンの軍服。燃えるような赤毛にほっそい目。腰には大きな大剣を携えている。

ムキになって言い捨てるものの――やがて、大きな影は私の目の前で足を止める。


「アイリス=ロルシエ――」

「だから、なによ⋯⋯」


昨夜、刃を突き付けられたの一件を思い返すと震えそうだ。でもこんなやつになんか負けたくない。対抗するように、目を睨みつけていると――


「お前の見張り担当になった」


耳を疑うような台詞が聞こえてきた。


「⋯⋯は?」


今なんて言った? 聞き間違いだろうか。


「だから――、陛下命令で、今日からお前を見張りしろって命令されたんだよ。お前を逃げないように監視してやる」


はぁぁぁ――――?!