カティアはグレイソンの婚約者で、容姿は可憐な箱入り娘といった形容がよく似合うが、中身はとんでもない。

 プライドが高く自己中心的な性格で、嫉妬のかたまりといっても過言ではないほどグレイソンに執着しており、私に会いに来たグレイソンを毎度鋭い眼光で迎えに来るのだ。

 カティアの実家が政界にも顔が効くほどの名家であるため、周囲は彼女の意見には逆らえず、取り巻きが常にご機嫌取りをしている。

 あぁ。今日もまた睨まれた。


「グレイソン。ここへ来ても、二度と話しかけないで。私は、薬師として働きたいからここにいるだけ。あなたじゃなく、あなたの実家の植物園に用があるの。これ以上カティアに嫌われたら、家の立場も危うくなる」

「カティアとは、両親が勝手に決めた婚約なんだ。彼女もそれをわかっているはずさ。なんと言われても、俺が愛しているのは君だけだよ」


 いくら伝えても平行線である。彼には、私の言葉なんてなにひとつ届いていないのだ。