夜の公園で私を抱きしめた会長は、王子なんかじゃなく会長なんかじゃなく、ただの1人の男の人だった。


愛されたいと、私を求めた、1人の男の人だった。


ぎゅっと私を抱きしめた温度。

私の涙を拭った、今までで一番優しい顔。


静かな、声。

ぽつりぽつり、自分の話をしてくれた。


きっと慣れないことなのに。



その震える声と、壊れ物を触るように私に触れる手が。


会長が18になった日の夜、そのかけがえのない一瞬が。


あまりに愛しくて。

あまりに愛しくて―――――、




「好きって言われてない」



大切なことを忘れていた。