みんな…今までありがとう…迷惑もかけたけどお前らといれて楽しかったわ…また会えるといいな…いや、絶対会えるわ。本間ありがとう。またな。





そういってナイフを胸に突き刺そうとした瞬間、
君が突然現れたんや。



「自殺なんて…っアホちゃう??!はよそれ渡し!危ないわ!!」


「えっ…?」




「本間、この学校に自殺者出現の看板立てんといてや。」




「お前…誰やねん!邪魔せんといてや」



「はぁ?この期に及んでまだ言うか?目の前で人死なれた身にもなってくれよ情あるなら」


そう言いながら君は暑そうにヒラヒラ手を仰いだ。




「はぁ…?」




なんやねんこいつ。急に来たと思ったら説教て。




「はぁ疲れた。ナイフ見えたから走ってきてもうたわ。」


そう言って君は俺の隣に腰を下ろした。



それと同時にチャイムが鳴る。

「あーあ3限目遅刻や。優等生やのにあかんことしてもうたなぁ!(笑)」



「なぁ…お前誰なん?急に来て。」



「自分は菅原花之華(すがわらかのか)!2年F組!そっちは???」





「俺は、桜庭光太郎(さくらばこうたろう)2年G組。」





「G組かぁ!年下かと思ったわぁ〜(笑)あっ別に童顔とかそんなんちゃうで??傷つかんといてな?!」




・ ・ ・ ・ ・
なんか相変わらずずっとへらへらしてて掴みどころがないやつやな…







「本間今日暑いなぁ。あっせやちょっと待っとってや!なんか買うてくるわ!!!」




「あっえっ待っ…」




そう言いながら君は走っていった。





なんやねんこいつ。俺がそこのナイフでもっかい死のうとするかもしれへんねんで?そんなやつに待っとけとか普通言う?お人好しすぎんとちゃうか。



そう思ってもさすがに暑くて動けず、校舎裏の壁に腰掛けたまま菅原の帰りを待った。






3分くらいすると、



「お待たせ!!アイスとジュース!遅なってごめんよーー!」

そう言い雪見だいふくとサイダーを俺に渡してきた。




「もしかしたら俺そこのナイフでもっかい死のうとするかもしれへんで?なんで待っとってとか言うたねん。帰ってきたらもう死んでましたーなんて後味悪いやろ。」
暑さのせいか言うつもりのなかった言葉を口走ってしまった。
暑さのせいや。これは。
・ ・
君とまた話してみたいなんて死んでも言いたくなかったから。


まあ死んでもなんて、本間に死のうとしてた奴が言うことちゃうな。
なんて思っていたら、



「ははは(笑)それもそうやな。でもアイス食べんまま死ぬほうが後味悪ない?」




「そうやな、ご名答。」


笑う君に釣られて思わず笑っていたらしい。
すると



「なんや、楽しそうに笑うやんけ。ずっとその方がええやん。楽しそうなままおり。」
そう目だけ悲しそうに俺を見て言った。




「え?なんやねん急にどういう事や?」





「えっいや何もないわ。暑さで頭やられとるわ。さっアイス食べよ!!」



そう言い君はスーパーカップのショートケーキを、俺は雪見だいふくを食べ始めた。


雪見だいふくは俺の好物だったから普通に嬉しかった。
やけど既に溶け始めて食べづらかったのでプラマイゼロにしといた。



そこから4限目が始まるまでの1時間、俺たちは他愛もない話を弾ませた。
最近めっちゃ面白かった本の話、最近起きた芸能人のゴシップの話、めっちゃ泣いた映画の話。



長時間話していたにも関わらず、
あいつは俺に自殺のことは一切聞かなかったし
そんな話題は綺麗に避けていた。





そして3限目の休み時間が始まるチャイムが再び鳴る。
「おおそろそろ行かな。桜庭くんも授業遅れたあかんでー!じゃあまたいつか!」



そういって落ちたナイフを拾い制服にそーっと隠し、走って校舎の方へ向かった。




実を言うと俺はあいつを知っていた。
それも入学した頃から。
そりゃ気付かへんよな。
本間ちっさい事やったもん。
俺でさえも名前聞くまで誰かわからんかったしな。




お互い1年でよう変わったなぁ。
でもあんたのその性格は全然変わってへんかった。



シュワシュワと泡が弾けている炭酸を一気に飲み干し、校舎へ走る時、俺は、理由もわからず、微笑み、高揚していた。