「な、なんで…?」


唖然と呟く圭子の後ろから、私も冷蔵庫を覗き込む。


確かに昨日はあった『りんごタルト』が綺麗さっぱりなくなっている。


誰かが食べたんだ。


それか捨てたのか。


「マズかったから、一口だけ食べて捨てちゃった」


愛海がそう言って、ほくそ笑む。


「あ、あんたが…?」


「だってバレバレだって。前の時、愛海が【り】で終わってもいい感じだった。つまりそれは、もう【り】から始まるものを見つけてあったからでしょ?」


「まさか、それで前の時【る】で終わらせたの?」


私の問いかけに「するどーい!」と喜ぶ愛海。


「その【り】から始まるものを探す必要があった。予め仕込むのはルール違反だけど、移動させたり捨てたりはオッケーみたいだしー」


「そんな…」


まさか愛海がそこまで考えていたとは。


私たちなんかより、一歩も二歩も先をいっていた。


ずる賢いというか、こういうことには頭が異様に働くんだ。


「なんて女なの!」


掴みかかろうとする圭子を、私は止めた。


「それより早く探さないと!」


「──分かった」


素直に従う圭子は【調理実習室】を家探しした後、教室に戻る。


それでも、見つからなかったんだ。