納得がいかないイトカ。


「シバ社長!
 どうするんです!?」

「…うるさい。
 たいした話ではない」


社長室に戻り本人に問い詰めるものの
いつもと変わらぬ面持ちと
あまりに薄い反応で
まるで他人事。


「全然たいした事あるじゃないですか!
 あのキモイ男に
 会社を乗っ取られるかもしれないんですよ!?」

「だから口の利き方に――」

「何を呑気なッ
 そんな事になってもいいんですか!?」


冷静沈着すぎる社長にイトカは捲し立てるも
反論する事もなく
デスクの上で指を組んだまま黙っている。


「…私がこの街から出て行けば
 問題は解決しますか?」

「何を言い出す」


予期せぬイトカの提案に
不機嫌な表情で社長は反応。


「私が足枷になっているのであれば
 すぐにでも出て行きます。
 婚約を破棄してください」


イトカの真剣な眼に
『まさか…』と察する。


「お前…
 あの人に何を吹き込まれた」

「…いえ、何も」


社長の問いに視線を外して答えてしまい
見え透いた嘘だとすぐにバレてしまった。